
悲しむべき野生の摂理です。
種族保存本能が予想より早く出現しました。
親子ですので、状況はお判り頂けると思います。
さて、先ずは捕獲。
都会の野生は簡単にゲージに入るはずも無く、
凄まじい行動力で逃げ惑いました。
ドクターは食事に麻酔剤を混合して、
眠ってもらうことを提案してくれました。
一応、薬はもらってきましたが、
服用させる気にはなりませんでした。
応急的な知識ですが、ショック死もあり得ます。
なんとか段ボールに入っている二つの命を、
そのままゲージに入れました。
タクシーのトランクの中で、
揺られながらどんなに恐ろしい思いをしたことでしょう。
次の日、
退院を迎えにいって、
ゲージの中の二つの命を観たときに、
不覚にも涙がこぼれました。
なんと、
母猫は子猫に覆いかぶさって必死に守っていたのです。
麻酔が完全に切れた訳ではありません、
極端な動きは自分の腹をもう一度切ることになります。
完全に人間を信じなくなっていました。
ごめんなさい、二つの命。
タクシーがマンションに着きました、
まだ一声も泣きません、
自分の居場所を知られまいとする必死の野生です。
ところがエレベーター前に付いたときです、
二週間過ごしただけの我が家が判ったのでしょうか、
それまで聞いたことの無い、
心細そうな、生まれたての赤ちゃんのような、
泣き声を上げました。
二度目の涙が私の心の抑えを無視して、
眼鏡を曇らせました。ごめんなさい、二つの命。
部屋でゲージの扉を開けてもすぐには出てきませんでした。
私達はじっと彼らから見えないソファで
やりきれない思いをこらえていました。
地域猫の存在は決して小さな問題ではないと思います。
地球の温暖化とも決して無関係ではない。